先日、自動車免許の更新のために近くの警察署へ行ってきました。
私はゴールドの優良運転者なのですが、それでも教室で30分間の安全運転講習があります。
講習ではDVDの映像を見ます。目を覆いたくなるような事故の瞬間の数々、ヒヤリとする瞬間の数々が映し出されます、ドーン、グシャ。キキ―ッ、ブブー。ピーポーピーポー・・・。
私の心中はドキッ、ハッ、ヒヤッの連続。「これは実際の映像なの?それともスタントマン?それにしてもリアルすぎる」と思いました。
それを見せて注意を促すのが目的の映像ですから、きっと私は良い生徒なのでしょう。
その交通安全を呼びかけるDVD映像の中に、心に残ったモノがありました。
それは交通事故で小学1年生の息子を亡くした、あるお母さんへのインタビューです。
最初に映し出されたのは、息子が亡くなった四つ角の事故現場に立ち、「ここで息子は脇見運転のトラックに引かれて亡くなりました」と語るシーン。
そして、家の中へと場面は変わります。亡くなってから日はだいぶん経つんでしょうけど、部屋の中は息子さんの想い出の品ばかり。
お母さんは息子さんの写真を後ろにして亡くなった息子さんの想い出を語りました。
亡くなったのは1月頃だったのでしょう、息子の突然の死に何も手につかない状態だったけれど、日々の生活があります。そうもしてられません。お母さんはゆっくりと身体を動かしはじめます。
かなり過ぎてしまったけれど、お正月の飾りを仕舞おうと鏡餅を手にした時、パラパラパラと何かが床にこぼれ落ちました。
それはアサガオの種でした。「なぜこんな所に?」とお母さんは思いましたが、すぐに気が付きました。
それは小学生の息子さんが、イタズラで隠していたのです。お母さんは、そのアサガオの種を大事に大事に、一粒一粒すべて拾いあげたとか。
そして、お母さんは息子の通っていた小学校へ行った時に、校長先生にワケを話し
て「もし良かったら、この種を学校の花壇に植えてもらえませんか」と。
校長先生はそのお母さんの気持ちを受けてくれて、学校の花壇に種を蒔きました。
DVDは次のシーン。
種から芽が出てその芽がぐんぐん伸びて青々と茂り、たくさんのアサガオの花が咲き誇っている花壇の映像が映し出されました。
空に向かって3メートル、4メートルは伸びていたでしょうか。「スクスクと伸びてイキイキとして、なんと生命力のあるアサガオか」と私は思いました。
校長先生は、毎年そのアサガオの花が咲く頃になると、アサガオの種の話を子供たちに話し、「命の大切さ」「命の尊さ」を伝えているそうです。
確かに「命の大切さ」「命の尊さ」もその映像から伝わってきましたが、私はその生命力のあるアサガオの映像を見て、「お母さん大好き!」という子供の声が聞こえるような気がしたのです。
その時、私は「生き死にの境を超えて、思いは残る」、「その思いは残って働く」と教えられてきたことを思い出しました。
「私たちは一人で生きているのではないんだな」と改めてそこのところを気が付いたようなことです。
息子さんを早くに亡くしたお母さんの寂しく辛い気持ち、これはなかなか癒えるものではありません。
けれど、この事に気づいて、これからも息子さんと頑張り合い・励まし合いをしながら、一緒に生きていって欲しいと願わずにはおれませんでした。