今日は成人式ですね。
成人式では、だいたい「権利と義務」「選挙と納税」を伝えられて、記念品をもらって帰るそうです。私の古い記憶でもそうだったような気がします。
「成人するのは私なのに、着物の着付けとか、美容院とか、記念写真。お母さんが張り切って。」っていう成人を迎える人の声を聞いたことがあります。
たしかにある意味では成人式っていうのは、親のためのモノでもあるとも言えるかもしれません。
「親として20年頑張ってきた喜び」と「子離れ」の儀式とでもいいましょうか。
今日は私なりの、新成人の方々に贈る言葉を書かせてください。
「今日は皆さん『おめでとうございます』という言葉を耳にしていますが、この言葉の意味はただ単にお祝いのあいさつというわけじゃないんです。
そんな軽々しいものではありません。
この言葉の中には、
師匠が弟子を育てて、弟子を一人前にして自分の手元から送り出す時の心が込められている。
親が子供を小さい時から一生懸命に育てて、子供が一人前になって世の中へ出る、親のところから離れる。
そういうわが子を送り出す時に、親がいろんな思いを込めて『おめでとう』と言っているんです。
だから、この言葉をお祝いのあいさつと軽々しく受け止めてほしくアリマセン。
字にしてみると、「目」という字を当てて「お目でとう」と書きます。
しかし、草冠の芽、芽が出るという字を当てて「お芽でとう」が本当の意味なんだと私は教えてもらいました。
今、成人式を迎えて自分は一人前と思っているかもしれませんネ。
けれども、考えてみると自分は親が作ってくれた冷暖房完備の部屋で安心して今まで生きてきた。
そして、その冷暖房完備の結構な部屋から、自分が出て初めて世間に身をさらすことになります。
これが社会へ出るということ。
ですから、この部屋を出れば、それこそ何もかもが自分たちの身に響いてくる。
冬は寒さがしかに身に染みてきます。
夏は暑さがじりじりと照りつけてわが身を焦がします。これからこういう生活をしていかなければなりません。
そして、そういう生活の中で、親は『あなたたちは、新しい芽を出しなさい』と厳しく放り出すような心持ちを込めて送り出す。
それが『おめでとう』 芽を出しなさい という言葉なんです。
その反面で、親の心の底をのぞいてみたら
『ああ言って送り出したものの、これからあの子は生活をしていけるであろうか。皆さんと仲良くしていけるであろうか。食べていけるであろうか』と、いろんなことを心配しています。
つまり、親の厳しい励ましと共に、わが子への心配や不安が入り混じっているんです。
親の祈りと言うと格好がいいですが、親の叫びです。
親が心配のあまりに叫んでいる。そういう親の思いが込められている『おめでとう』なんです。
『おめでとう』と言われて、『ありがとう』と簡単に返答するんじゃなくて、
どうぞ皆さんがその言葉に込められた親の思いを知ってください。
それを励みにこれから生きていけば立派に生活していけると思います。
本日は、成人式おめでとうございます」
うーん、ちょっと固かったかな。
「地に足をつけた生き方をしましょう」って言いますように、
こういう親の思いが自分の中に染みて、それを自分が自覚した上で若い人がこれから一生懸命生活していく、生きていくから、それでやっていくことができると思います。
子供を可愛がって大きくして、その子供が親のところから離れていく。その子供を送り出す時の親の心境。
こういう気持ちや心境が土台にあって、弟子が一人前に生きていけるし、子供が親から離れて立派に自立することができるんです。力を発揮できる。
この親の思いを忘れないようにしてもらいたいと切に思います。